英語教師Q&A⑥(英会話で文法や発音のエラーをどこまで直すべきか?)


 今週、当ブログでは、現役英語教師の先生方、および英語教師になりたいという方からお寄せ頂いたご質問への回答を載せております。

Q: アメリカの大学を卒業し、1年前に帰国しました。その後、一般企業に勤めながら、3か月ほど前から、週末に英会話を教え始めるようになりました。レッスン中、生徒の話す英語が文法的に間違っていたり、発音が正しくなかったりすることがあります。そんな時、どの程度、直すべきなのか、判断に迷います。どうすればいいでしょうか?

A: これは、生徒が大人か子供かによっても違いますし、またレベル(英語力)によっても違いますので、一概に「こうだ!」とは言いにくいですね。

 例えば、大人の発話で文法の誤りがある場合、どう誤っているのかを理屈で説明してあげると、「あっ、なるほど」と言って、その誤りを正すようになります。

 一方、子供(特に小学校低学年)は、まだ文法を体系的に学んでいないため、理屈で説明しても、理解しない可能性が高いです。

 その場合は、生徒が文法的に誤った文を発した後に、先生がやんわりとした口調で、正しい文を言ってあげるといいと思います。例えば、こんな具合です。

先生:What color do you like best?

生徒:I best like pink.

先生:Oh, you like pink best.

 この後、同じタイプの質問を幾つか続けて、同じ誤りが続くようなら、会話の用例を紙かボードに書いてあげるといいでしょう。例えば、以下の通りです。

A: What subject do you like best?

B: I like English best.

 これを先生が読み、生徒にリピートさせます。その後、また同じ型の別の質問をします。例えば、What season do you like best? (*Whatの代わりにWhichでも可)など。

 これが大人であれば、「副詞のbestはSVOの後に置くんですよ」と、文法的な説明をしてあげた方が、修正が速いはずです。

 発音についても、基本的には、文法と同じことが言えます。例えば、強勢の位置が間違っている時など。

 例えば、interesting。この単語は、第一音節(最初のi)に強勢があります。ところが、生徒が、第三音節(二つ目のe)に強勢を置いたとします。

 この場合、生徒がその文を言い終わった後に、先生が正しい発音でなぞることで、正しい発音を暗に示すという方法があります。

先生:How was the movie?

生徒:Very interesting.

先生:Oh, it was very interesting.

 この後も、修正が見られない場合は、「interestingの強勢(アクセント)の位置が違います」と言って、正しい発音を聞かせ、生徒にリピートさせるといいでしょう。

 子供は耳が柔軟なので、理屈で説明しなくても、正しい発音を聞かせて、それをリピートさせるだけでも、すぐに修正します。

 大人の場合は、音を聞かせるだけでなく、「interestingは第三音節ではなく第一音節に強勢を置きます」といった論理的な解説を加えた方が、修正につながりやすいです。

 どこまで修正を加えるかは、程度にもよります。明らかに間違っている場合や、通じないレベルの間違いが見られる場合は、しっかりと修正してあげるべきでしょう。

 ただ、「全てを正しい発音で」となると、正直、キリがありません。生徒がそれを望んでいる場合は別ですが、そうでなければ、ある程度、許容していくしかないでしょう。

 ですので、文法にせよ、発音にせよ、「どの程度直すべきか」は、程度問題です。状況に応じて判断していくしかありません。

 英会話のレッスンにおいては、文法や発音の正確さ(accuracy)よりも、意思疎通が優先されます。よって、意思疎通に支障きたす恐れのある誤りについては、修正を加える。マイナーなものについては、敢えて触れず、コミュニケーションの継続を優先する。

 こうした指針を持っておけば、直すべきかどうかの判断がしやすくなるのではないでしょうか。

(以上)

 如何でしたか?生徒が犯したエラーを、授業中、どこまで直すべきなのか。多くの英語教師の先生が、迷うところだと思います。

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