私が英語講師をしていて、「ＴＯＥＩＣ対策」の授業を受け持っているという話をしますと、時々、一般の方から「いくらＴＯＥＩＣで高いスコアを獲っても、英語は話せなきゃ意味ないですよね」と言う方がおられます。
そして、「会社でも、ＴＯＥＩＣで８００点とか９００点とか持っている奴、いるんですけど、仕事で英語が使えるかって言うと、必ずしもそうじゃないみたいなんですよね」とのこと。
つまり、この方の見解としては、「だから、ＴＯＥＩＣを受けても意味がない」、あるいは「ＴＯＥＩＣの勉強をしても意味がない」ということのようなのです。確かに、おっしゃっていることは理解できます。ただ、私の見解は少々異なります。
就職や進学等で、どうしても要求されるスコアを獲らねばならないという状況ではなく、純粋に英語力を伸ばすために、ＴＯＥＩＣを活用するという方が、スコアを伸ばすためだけの勉強に終始するのは、確かにあまり意味がないのかもしれません。
とはいえ、ただ漫然と英語学習を続けるとなると、モチベーションの維持が難しくなることがあります。だから、何かしらの目標を設定した方がいい。その意味で、ＴＯＥＩＣを活用し、スコアアップを目指すというのは、意味のある学習だと言えましょう。
次に、「ＴＯＥＩＣで８００点や９００点を獲っても、仕事で英語が使えない」というお話について。これは、英語力が足りないのが理由ではなく、仕事で英語を使う機会が、これまであまりなかったからではないかと思います。
ですので、「８００点や９００点を持っていても意味がない」としてしまうのは、やや強引ではないかと思います。むしろ、高い英語力を有しているので、あとは「場数」を踏むことで、仕事でも十分に英語が使えるようになる、と考えるのが妥当ではないでしょうか。
逆に、ＴＯＥＩＣのスコアが６００点の人でも、海外赴任の期間が長く、職場で日常的に英語を使う環境にあった人なら、仕事で英語を使うことに慣れているでしょう。ですから、一見、６００点の人の方が「英語力が高い」と思いがちです。
しかし、よくよく吟味すると、実は発話の際、文法のエラーが多かったり、使える語彙の範囲が狭かったりするものです。「正確さ」より「意思の疎通」を優先するあまり、いわゆる「ブロークンな英語」が定着してしまったのかもしれません。
逆に、８００点、９００点の人が、海外赴任するなどして、仕事で英語を使う機会が多くなると、本領を発揮するかもしれません。６００点の人に比べて、文法の精度が高く、語彙が豊富で、聞き取りも正確で、発話の際のエラーも少ない、ということが起こり得ます。
「ＴＯＥＩＣにまぐれはない」。これは私がいつも「ＴＯＥＩＣ対策」を受講する生徒さんに言うことです。よく、謙遜して「まぐれで８００点獲れました！」などと言う人がいますが、これは「まぐれ」ではなく「実力」です。実力がなければ８００点は獲れません。
６００点の人が８００点を獲ろうと思えば、相応の学習を積まねばなりません。そして、努力を重ね、８００点を獲るだけの英語力に達した時、初めて８００点が獲れるのです。だから「まぐれ」はないのです。ＴＯＥＩＣにおいて、努力は嘘をつきません。
６００点は６００点の実力、８００点は８００点の実力。この両者には、歴然とした差があります。先にも述べたように、職場での英会話など、表面的な部分では、「慣れ」の違いから、６００点の人の方がよく話せているように見えることもあります。だからと言って、「６００点の人の英語力が、８００点の人のそれよりも上」ということにはなりません。
あくまでも、６００点は６００点の実力でしかありません。ですので、今、６００点の人が、英語力を伸ばすために、７００点や８００点を目指して、英語学習やＴＯＥＩＣ対策に励むことには、大いに意味があることなのです。同じく、８００点の人が９００点を、９００点の人が９９０点（満点）を目指して、それぞれ努力を重ねる。これは、大いに意味のあることであり、誠に尊いものがあります。
ですので、「ＴＯＥＩＣで高いスコアを獲ってもあまり意味がない」とか、「ＴＯＥＩＣを受けても意味がない」、「ＴＯＥＩＣの勉強をしても意味がない」といったご意見には、個人的には賛成しかねます。むしろ、英語力を伸ばそうと「ＴＯＥＩＣ対策」に励み、スコアアップを目指すといった努力そのものに意味があり、そこを称えたいと思います。
ただ、自分一人で頑張っていて、スコアが停滞し出すと、「やっぱ無理なんじゃないか」といったネガティブな思いを抱きがちです。そんな時は、お気軽にご相談下さい。
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