英語教師が心得ておきたい英文添削の留意点④(「二重結論」について)


 essayを書くにあたって、最も基本的で、かつ最も重要なことがあります。それは「聞かれたことに答える」ということです。

 「そんな当たり前のこと、わざわざ強調しなくても」と言うなかれ。私はこれまで、生徒が書いた無数のessayを添削してきましたが、これができていないことがよくあります。

 添削の際、特に気を付けなくてはならないのは、最後のConclusion(結論)です。ここで「二重結論」になってしまっていることが、実に多いのです。

 「二重結論」とは、最後の結論部分で、二つの結論を述べていることを指します。以下に例を挙げます。

 essayのお題が、「Some people say that many people will lose their jobs in the future due to technological innovation. Do you agree?」だとします。

 このお題の意味は、「技術革新のせいで、将来、多くの人が職を失うと言う人がいますが、あなたは同意しますか?」です。

 この問いに対する筆者の見解が「No」だとします。そして、その理由をBody(主要部)で2~3述べます。

 さあ、いよいよ、最後の締め。Conclusionでは、改めて自身のスタンスについて触れる必要があります。

 例えば、For these reasons, I think that not so many people will lose their jobs because of technological innovation. などと述べます。

 この文の意味は、「これらの理由から、私は、技術革新のせいで、仕事を失う人は、そう多くはないと思います」です。

 これこそまさしく、このessayの問いに対する筆者の答えです。ですので、これを結論にしなくてはなりません。

 ところが、語数が足りないなどの理由から、最後のConclusionを無理に膨らませようとする生徒がいます。

 先の結論の一文を述べた後に、もう1~2文、付け足すのです。以下に例を挙げます。

(例)For these reasons, I think that not so many people will lose their jobs because of technological innovation. Rather than losing their jobs, I think that many people will benefit from it. Therefore, it should be more encouraged.

 Rather以下を訳すと、「仕事を失うどころかむしろ、多くの人がその恩恵を受けると思います。よって、それ(技術革新)は、もっと奨励されるべきです」です。

 この見解そのものは、確かに筋の通ったものと言えます。しかし、Therefore以下は、二つ目の結論になってしまっています。

 もし、このessayのお題が、「Do you think that technological innovation should be more encouraged?」であれば、Therefore以下の文は、それに相応しい結論と言えます。

 しかし、このessayのお題は、あくまでも「技術革新によって多くの人が仕事を失う」という意見についての賛否を問うものです。

 よって、Therefore以下の一文は、このessayのお題に対する答えにはなっていない、ということです。

 ですので、このessayの最後のConclusionにおいては、Therefore以下の一文は、入れるべきではありません。

 ただ、添削者として、この「二重結論はNG」という意識を持たずに、漫然と生徒が書いたessayを読んでいると、つい、その意見に納得してしまうことがあります。

 そして、「よく書けているねぇ」などと言って、生徒が書いたessayに高評価を与えてしまうのです。

 これは、非常に危険なことです。何故なら、生徒は「二重結論」の不備に気付かないままになってしまうからです。

 こうなると、writing test本番でも、「二重結論」を書いてしまう恐れがあります。そうすると、本人の手応えとは裏腹に、低い点数を獲ってくることになりかねません。

 こういった事態を避ける意味でも、添削者である我々英語教師は、「点数の獲れる作文」と「点数の獲れない作文」との違いを理解しておく必要があります。

 今回、採り上げた「二重結論」は、生徒が書いたessayを添削する上で、留意すべき項目の一つです。

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