英語教師が心得ておきたい英文添削の留意点②(主観的な意見の述べ方)


 昨今の英語教育は、「4技能重視」のため、我々英語教師とって、最近、生徒が書いた英文を添削する機会が増えました。

 ただ、ライティングの添削は、文法・語彙問題のように、必ずしも「一つの正解」がある訳ではありません。

 それ故、英語教師の裁量の幅が広く、その場に応じた適切な判断が求められます。よって、我々英語教師は、その判断力を磨くための相応の訓練をしておかねばなりません。

 では、具体的に何をすればいいのか。やはり、一番の訓練は、実際に生徒が書いた作文を添削することです。

 それに加えて、生徒が犯しやすいエラーを把握し、それをどう校正し、指導するかといったことを日頃から考えておくことも重要です。

 そこで、本項では、生徒が犯しやすいエラーの一部を採り上げ、エラーの理由と、校正の仕方について論じていきたいと思います。

 以下に、例を挙げます。

(例)Using a smartphone for many hours is bad for the eyes.

 これは、生徒がライティングの授業で書いた英文です。この文の意味は、「スマートフォンを長時間使用するのは目に悪い」です。

 この文、文法的には、間違ってはいません。ただ、細かいツッコミを入れるとすれば、トーンの問題があります。

 トーンとはつまり、調子のことです。この文は、「言い切り型」と言いますか、「断言調」なのです。

 「S be C.」という文を書くと、どうしても「言い切り」になってしまいます。というのも、「S be C.」は「S=C」という意味だからです。

 これは、例えば、「One plus one is two.」(1+1=2)のような、不変の事実を述べる時には有効なスタイルです。

 この他、「Mr. Sato is a science teacher.」(佐藤さんは、理科の先生です)のように、人の身分を表す場合などにも使えます。

 その点で言うと、先に挙げた文(Using a smartphone for many hours is bad for the eyes.)は、「不変の事実」とまでは言えない内容です。

 確かに、スマホを長時間使用すると、目に悪いのは、恐らく事実だろうと思います。ただ、何か科学的なデータに基づいたものではなく、あくまでも「そうだろう」という推測です。

 「推測」ということは、つまり、それは「筆者の主観」だということです。そうである限り、「S be C.」の「言い切り型」は、やや危険ではないかと思われます。

 では、どうすればいいのか。例えば、「筆者の考え」であることを明らかにするために、「I think」を文の冒頭に付ける、という手があります。

 I think (that) using a smartphone for many hours is bad for the eyes.「スマートフォンを長時間使用するのは目に悪いと思う」とすれば、「断言調」ではなくなります。

 もしくは、「そういった可能性がある」ということで、「助動詞can」を用いるという手もあります。

 Using a smartphone for many hours can be bad for the eyes. とします。そうすると「スマホを長時間使用すると、目が悪くなる可能性がある」といった意味になります。

 このように、「I think」や「can」を使うことで、トーンを和らげることができます。これらは、作文で筆者が主観的な見解を述べる際に使える有用な表現です。

 逆に、「S be C.」や「A is B.」のように、be動詞を単独で用いると「断言調」になり、トーンが強くなります。

 ですので、生徒には「S be C.」や「A is B.」は、「事実を述べる際に用いる」と認識させるといいでしょう。

 こういった「微妙なニュアンスの違い」や「トーンの強弱」を指導することも、英語教師が生徒の英文を添削する上で、必要なことだと思います。

 ですので、我々英語教師は、日頃、英文に目を通す際、こういった点を意識しながら、英文を見るようするといいでしょう。

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