「目的語」を教える最適なタイミングとは?


 前項『「自動詞」と「他動詞」を生徒に区別させる方法』で、日本語の文を作らせることを提案しました。その際、「~を」に相当する語句がないと文が成立しない場合、その動詞は「他動詞」だと。つまり、他の語句に依存するから「他動詞」と呼ぶのだと述べました。

 これまで、『「~を」に相当する語句』という言い方をしてきましたが、これを文法用語で表すと「目的語」です。本項では、この「目的語」という文法用語を用いる最適なタイミングについて、論じてみたいと思います。

 中高で英語を習った大人であれば、「目的語」という用語は耳にしたことがあるはずです。「それが何であるか」ということをどれだけ理解しているかはともかく。しかし、英語を習い始めたところの小中学生にとっては、馴染みのない言葉です。

 そこで、いきなり「目的語」という用語を使う代わりに、『「~を」に相当する語句』という、言い方をしてきました。「目的語」という文法用語に馴染んだ者からすると、「何てまどろっこしい言い方なんだ」と思うことでしょう。

 ただ、その「まどろっこしい言い方」で表現してきたことで、「目的語」という用語を使った時に、「それが何であるか」を生徒は理解しやすいのではないかと思います。少なくとも、いきなり「目的語」という文法用語を使うよりは。

 逆に、いきなり「目的語」という文法用語を使う場合は、それが何であるかを説明する必要があります。例えば、「受動態になれるのは他動詞。他動詞は目的語を必要とする動詞。目的語は「~を」に相当する語句」といった具合に。

 いずれにせよ「目的語」が何であるかをわからせる必要があります。その順番をどっちにするか、です。先に「目的語」という用語を出して、後でそれが何かを説明する。或いは、最初は『「~を」に相当する語句』と言っておいて、後で「これを目的語と言う」とするか。

 私は、個人的には後者を支持します。つまり、最初は『「~を」に相当する語句』といった「まどろっこしい言い方」をしておいて、後で『これを文法用語では「目的語」って言います』という教え方を採用する、ということです。

 ただ、いずれにしても、「目的語」という文法用語の使用は、英文法を指導する上では、避けられないと思います。というより、避ける必要はない、と言えます。

 英語教師の先生方の中には、「文法を教えると、英語嫌いを生んでしまうのではないか」との懸念から、授業での文法用語の使用を極力回避しようとする先生もいます。

 しかし、私は、そこまで気を揉む必要はないと思います。何故なら、文法用語の使用は、授業効率の向上に寄与するものだからです。

 例えば、先に挙げた『「~を」に相当する語句』という表現の代わりに、「目的語」という文法用語を使う。この方が、説明が簡素になります。

 文法用語を使用する側(英語教師)と、それを聞く側(生徒)との間での共通の理解が一旦得られれば、それを使った方が、授業はスムーズに展開します。

 ですので、英語の授業で、文法用語は使っていい(又は、使うべき)。但し、そのタイミングが重要です。

 その最適なタイミングは、「それが何たるかを生徒が十分に理解した後」だと、私は考えます。その時にタイミングよく「これは(文法用語では)目的語って言うんだけどね」と、文法用語をさらりと持ち出す。これが「目的語」を教える一番の方法ではないかと思います。

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