「受動態」を教える前に抑えておくべきこととは?


 「英文法の指導」と言っても、文法書に載っている全ての項目を教える訳ではありません。その中には、教える頻度の高いものと、そうでないものとがあります。そんな中、「受動態」は、教える頻度の高い文法項目の一つです。

 例えば、Mr. Takahashi wrote this letter. 「高橋さんがこの手紙を書きました」という文。これは「能動態」の文ですが、「この文を受動態にしなさい」といった問題が、いわゆる「学校英語」では、よく出題されます。

 能動態の文を受動態にするには、幾つかのステップを踏む必要があります。まず、第一のステップは、一般動詞の活用変化です。活用変化とは、「原形」―「過去形」―「過去分詞形」のことです。

 例えば、「~を呼ぶ」という動詞のcall。これは、call- called -calledと活用変化します。過去形と過去分詞形は、原形に「-ed」を付けるだけなので、規則的に変化します。よって、こういった類の動詞を「規則変化動詞」と言います。

 では、「~を書く」という動詞のwriteはどうか。これは、write – wrote – writtenと活用変化します。語尾に「-ed」を付けるタイプではなく、不規則に変化します。こういった類の動詞を「不規則変化動詞」と言います。

 「規則変化動詞」の代表的な動詞(callの他、play, walk, useなど)を一通り教えた後、「不規則変化動詞」(writeの他、eat, sleep, runなど)を教えます。この時、「過去分詞形」は何かということについては、特に触れずに、とりあえず覚えさせるといいでしょう。

 この動詞の活用変化を教える際、抑えておきたいことがあります。それは、自動詞と他動詞の違いです。自動詞、他動詞という言葉を使わずに、「A群」、「B群」という風に分けてもいいでしょう。また、それぞれに「規則変化」と「不規則変化」を分けます。

 「A群」(自動詞)の「規則変化動詞」(=A1)には、walk「歩く」、live「生きる」、jump「跳ぶ」などがあります。そして、「A群」(自動詞)の「不規則変化動詞」(=A2)には、go「行く」、run「走る」、stand「立つ」などがあります。

 「B群」(他動詞)の「規則変化動詞」(=B1)には、use「~を使う」、watch「~を観る」、wash「~を洗う」などがあります。そして、「B群」(他動詞)の「不規則変化動詞」(=B2)には、wear「~着る」、find「~を見つける」、read「~を読む」などがあります。

 こうして、一般動詞を「2×2」の計4つのカテゴリーに分けます。そして、B群の動詞の日本語訳に注目させます。「これらの訳を見て、A群の動詞の訳との違いは何かわかる?」とクラスに尋ねます。

 この時、勘のいい生徒なら、『B群の動詞の訳には、全部「~を」って付いてる』と気付くはずです。この「~を」が付く動詞は、他動詞です。この他動詞こそが、受動態になれる動詞です。

 「他動詞」という言葉を使うかどうかはともかく、訳に「~を」が付く動詞が受動態になれる動詞だということは教えるべきでしょう。そうでないと、「be動詞+動詞の過去分詞形」の形さえ使えば、どんな動詞でも受動態が作れる、と思ってしまう生徒がいるからです。

 「受動態になれるのは、他動詞[あるいは(「~を」が付く動詞)]である」。この大前提を抑えておくと、後々、「奇妙な文」を作る生徒が少なくなります。「奇妙な文」とは、例えば、School is gone by her.(=She goes to school.を受動態にしたもの)といった文です。

 goの日本語訳は「行く」で、「~を」が付いていません。よって、goは「A群」の動詞です。先の大前提を習った生徒は、「A群の動詞(=「~を」が付いていない動詞)は受動態にはできない」というルールを知っているので、こうした「奇妙な文」は作らないはずです。

 このように、「受動態」を教える時には、動詞を4つのカテゴリーに分け、大前提(受動態になれるのはB群の動詞[=日本語訳に「~を」が付く他動詞)のみである]を抑えておくといいでしょう。

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