文科省の方針では、「中高の英語の授業は、原則、英語で行うこと」としています。こうした政府の方針に加えて、かつての「文法訳読式」の弊害が過度に強調されたこともあり、「英文和訳」を有害と見なす英語教師が少なくありません。
しかし、私はこの論には異を唱えたいと思います。英語の授業において、生徒に英語を日本語に訳させることの一定の意義はあると、私は考えます。本項では、「英文和訳」のメリットについて、論じて参ります。
英語だけで授業を進める場合、生徒の理解度の把握が難しいと感じることが少なくありません。例えば、リーディングをやらせた時に、生徒がどれ程、その内容を理解しているかを、英語教師は把握する必要があります。
予め内容把握問題を用意しておいて、それを解かせるという手もあります。しかし、内容把握問題の場合、往々にして、本文中から答えを探すという形式になりがちです。「ここはどういう意味ですか?」と、ピンポイントで理解を確認したい時には、有効とは言えません。
その場合、生徒の理解度を測る最も確実な方法は、その一文を訳させることです。「この文を意味わかる?」―「はい」-「じゃあ、ちょっと訳してみて」と、生徒に訳させる。
この時、その訳がポイントを抑えたものであるかどうかが重要です。翻訳家のような上手な訳ができなくてもいいのですが、ポイントを抑えた訳になっているかどうか。特に、単語、熟語、構文をしっかり抑えているかどうかをチェックします。
その際、うまく訳せないとなると、単語、熟語、構文のどれかの知識が定着していない可能性が高いと言えます。それがわかれば、英語教師は、次の手を打つことができます。例えば、構文を理解していないようなら、それを授業でもう一度おさらいすることもできます。
「ダイレクトメソッド」(英語を英語で教える)や「コミュニカティブ重視」の授業の難点は、英語教師が生徒の理解度を把握し辛い点です。それが正確に把握できないと、英語教師は、授業で適切な手を打つことができません。その意味で、「英文和訳」は、授業のクオリティアップに、一役買っていると言えます。
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